1:2020/01/03(金) 08:44:28.78ID:kYwr2tEe9 レバノンの首都ベイルートに沈む夕日(写真:ロイター/アフロ)
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カルロス・ゴーン氏の逃亡先として俄かに報道露出が増したレバノン。これまでは、内戦、イスラエルによる侵攻と占領、パレスチナ難民やゲリラが主なニュースとなってきたところがだ、その一方で同国の首都ベイルートは「中東のパリ」と呼ばれたこともあるすてきな街でもあり、同地での駐在経験を懐かしむ日本人も多い。
レバノンってどんな国?
レバノンは、地中海東岸に位置する、面積約1万平方キロメートル、人口420万人(推定)の国で、日本の書籍類ではしばしば岐阜県のような規模と称される。同国では、自由な経済体制と比較的自由な言論環境の下、かつては「中東のパリ」と称されるほどの経済・文化活動が営まれていた。また、狭い国土の中にキリスト教、イスラームの諸宗派が混在し、それぞれが地元のボスの下で自立性の高い社会を営んできたのもレバノンの特徴である。その結果、レバノンにはあまり力の強くない中央政府と、比較的自立性の高い地元の政治主体や共同体が存在することとなった。「あまり強くないレバノン」は、東隣にシリア、南隣にイスラエルという、地域の政治・軍事・外交上の重要国に囲まれ、その影響や軍事侵攻に悩まされてきた。さらに、かつてはパレスチナ、現在はシリアからの難民・避難民の存在は、レバノンの経済だけでなく、政治にも深刻な影響を与えている。
と、いうのも、レバノンでは国内に多数存在する宗教・主は共同体のうち18を「公認」し、それを単位に政治的役職や権益を配分する「宗派制度」と呼ばれる不文律に沿って政治や社会が運営されているからだ。つまり、ひとたび決まった権益の配分の量・質を変更しようとすれば、「損をする宗派」やその仲間から猛反発を受けるし、パレスチナ人やシリア人のように配分の割合が「決まった後で」やってきた者たちをレバノン社会の構成員として迎え入れることも至難となったのだ。その結果、レバノンは複数の内戦と幾多の政情不安を経験してきた。そうした中、辛うじて安定や内外の情勢との均衡を維持してきたのが、「決められない政治」と「決めない政治」(『「アラブの心臓」に何が起きているのか』(岩波書店) 第4章「レバノン」立命館大学末近浩太教授)とも称されるレバノンの政治エリートたちの処世術だった。彼らは、レバノン国内の力関係だけでなく、シリア紛争やより地域の国際関係の中で生き残りを図るべく、レバノンの政治や社会の運営で「重要な決定を可能な限り先送り」してきた。
このような体制や運営手法においては、政治エリートたちは自らに配分された権益を、今度は「子分」にあたる自分と同じ「宗派」の構成員と有権者に配分するボスとなる。有権者は、利益誘導への返礼、或いはボスへの忠誠表明として、ボスが率いる党派への投票に動員される。一般のレバノン人民にとっては、こうした人間関係こそがあらゆる機会を得る上でのカギとなるし、ボスたちは「子分」が自分よりも華々しく成功するような権益の配分は絶対にしない。従って、当然のことながら、そこには公正で中立で透明な司法も行政も立法もない。だからこそレバノンでは2019年10月から「革命」とも称される人民の抗議行動が起きている。抗議行動に参加するレバノンの人々から見れば、ゴーン氏はレバノンの政治・経済・社会の運営や、様々な社会的上昇の機会を独占してきた特権階級の一人ということになる。今般の逃亡についてレバノンの映画監督が寄せたコメントが秀逸なので、それを取り上げた時事AFPの報道を紹介したい。
「物語」としてのレバノン人像と実際にレバノンに住んでいるレバノン人像
商才にたけ、世界をまたにかけて活躍する移民や経済人というのが、レバノン人について世界的に持たれているイメージであり、一部のレバノン人も「フェニキア人の末裔」と称してこうしたイメージを強調している。実際、そのようにして活躍するレバノン起源の経済人・芸能人も少なくない。また、彼らの一部は、本当に「シャレにならない」経済活動(≒犯罪や陰謀)の場で名前が挙がることも少なくない。ただし、これは本当に世界をまたにかけて活躍しているレバノン人の自己表象の一端であり、実際にレバノンに住んでいるレバノン人が全員そういう活躍をしているわけではないことに注意が必要である。
続きはソースで
https://news.yahoo.co.jp/byline/takaokayutaka/20200103-00157486/
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