抜歯の経験から感じた寺田寅彦「正当にこわがることはなかなかむつかしい」

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「では親知らずを抜いて来て下さい」
「…4本とも?」
「4本とも」

矯正歯科の先生と私の会話でした。歯列矯正でよくあるのは第一臼歯(犬歯の後の歯)の抜歯らしいですが、それがイヤなら親知らずを抜いて、いびつな歯を整列させるスペースが必要なのです。

それはわかります。でも4本て。しかも私の親知らずはぜんぶ歯茎に埋没していたので歯茎を切って掘り返さないといけないのでした。

今はネットで情報を得られるから便利ですね。”親知らず”で検索をかけると抜歯も抜歯後も痛くてうめき声が聞こえてきそうな体験談が山のように出てきました。…どうすんねんこれ。

でもこの歯並びは何とかしたい。仕方なく大きな病院の口腔外科に行くと今度の先生は
「全身麻酔での抜歯はどうですか。」

全身麻酔。私、入院すらしたことないのですが。
「うん、全身麻酔だとね、抜く方も楽なんです。患者さんが身動きしないし」

全身麻酔。今はネットで(略)

”たまには死ぬよ”、”麻酔ってなんで効くかわかってないんだって”など頭をかかえる情報が山のように(略)。

でもこの歯並びは何とかしたい。

一泊二日の入院の準備をしてついに麻酔。「はーい、目の前がぐにゃぐにゃになってきますよー」ほんとだー。…。暗転。

次の瞬間、夢からさめるのと同じ感覚で覚醒。

実は人工呼吸器を突っ込まれて2時間弱が経過していました。と手術室の時計で確認。

確認できる程度にはいまマトモか。と安心。

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抜歯は乗り切った。抜歯後はどうなる。

しかし痛み止めも効いたらしく、腫れたし不快でしたが結局別に痛くはなかったのでした。もちろんこれは個人的な体験なわけです。先生も名医だったに違いないのです。

ですが
「痛くて悶絶」と
「大して痛くなかった」とだったら前者の方をネットでみんなに叫びたくなるよなあ。

後者の人はわざわざ体験談を書いたりしないかもしれない。

未来に残るデータには
「この時代の親知らずの抜歯はやっぱりとても痛いものだった」的なことしか残っていないのかもしれない。

情報はいっぱいあるけれど適切な事情を知るというのは難しい。もちろん今回の逆バージョンもありえる。

そういえば
「正当にこわがるのはなかなかむつかしい」ようなことを寺田寅彦先生が書いていたような。

そんなことを思った抜歯経験でした。

なお手術の傷がふさがってから歯列矯正を開始したのですがそっちはネットの情報通り結構痛かったです。

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