20歳くらいの頃は人見知りな性格のせいで、美容室で何を話せばいいのか分からず気疲れしてしまう事がよくありました。
ある日初めて予約したサロンで、
「担当する者に何かご希望はありますか?」と聞いていただいたときに、生意気にも
「お喋りが苦手なので、あまり構わないでください」と注文を付けました。
電話口の方は気持ち良く了解してくださり、お店に行くと店長さんが対応してくれました。
そこで無言で施述していただけるものと思っていたら、全く逆で。
「あそこのお店知ってる?おすすめですよ」という店長さんの行きつけ居酒屋情報に始まり、
「飼っている犬が天才で」などというペット自慢まで、店長さんのよもやま話をいろいろと聞かせていただきました。
意外でしたが、不思議と素直に会話を楽しむ事ができました。
帰り際に、
「実は人と話すのが苦手だから、喋らないでってお願いしていたんです。不安だったんですけど、今日は楽しかったです」と言ったら、
「伺ってましたよ。実は僕も昔はお客様と話すのが苦手で」と、そこからまた一頻り店長さんの昔話が始まってしまいました。
ご自分も若いころ先輩方から
「会話をしろ」と散々叱られて、悩まれたそうです。
喋らないといけない、と考えると確かに辛いけれど、お客様がまた来てくれるかどうかは、その時間を心地よく過ごせたかどうかに掛かっているのだそうです。
技術で満足していただくのは当たり前。
それ以外の部分で、相性が良ければ関係が続く。
今では、お客様が会話を楽しんでいるのなら、その雰囲気を大事にしようと思うのだそうです。
「必要なら、黙ってカットすることもありますよ」と言われて、この日そうされなかった事に対する気遣いを改めて感じました。
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